最近、至る所で目にする「SDGs」。
もはや現代における教養の一つと言っても過言ではないでしょう。
経営や事業にも関係があり、時代の流れに乗って取り入れた方が良いみたいです。
なんとなく自治体や大企業が取り組むものというイメージがありますが、個人事業主や零細企業にも取り組むメリットがあります。
個人事業主の方や小さいながらも会社を経営されている方は、本記事で解説するメリットを活かすため、ぜひSDGsに取り組むことを検討してもらいたいです。
本記事では
- 個人事業主や零細企業がSDGsに取り組むメリット
- SDGsに取り組んでいる先行事例
- SDGsへの取り組みの始め方
を解説します。
あなたの経営に取り入れるヒントが見つかると幸いです。
もしSDGsのことをまだよくご存じなければ、「【簡単に説明】SDGsとは」をご覧ください。基礎的なことについて解説しています。
個人事業主や零細企業がSDGsに取り組むメリット3つ
個人事業主や零細企業がSDGsに取り組むメリットは主に3つあります。
ひとつずつ紹介しましょう。
メリット① 自社のブランディングに効果的
第一のメリットは、SDGsに対する一般消費者の共感度が高いので、SDGsに取り組んでいると自社の製品やサービスのブランディングが有利になるというものです。
電通が2018年に実施した「SDGsに関する生活者調査」の結果があります。
これによると、SDGsの17の目標に対する平均の共感度は73.1%。
特に「水」や「海」に関するテーマへの共感度が高い。
「水」「エネルギー」「海」のテーマについては企業に期待する傾向が高い。
つまり、多くの人が次のように思っているということ。
「そういう目標は大事だよね。」
「企業にもしっかり取り組んでもらいたいし、個人的にも取り組みたい」
この調査はSDGs自体の認知度も調査しており、2018年では14.8%と決して高い認知度ではありません。
しかし、近年、SDGsは急速に認知度が高まっています。
こうして皆さんもご存知なように、現在ならもっと高い認知度なのではないでしょうか。
メリット② 取引先との関係性が向上
第二のメリットは、SDGsへの取り組みを早く始めていれば、それだけ取引先選定においてライバルより優位に立てること。
これまでのISOやPマークのように、企業が取引相手を選定する際の基準の1つにSDGsがなっていく可能性があるからです。
例えば、アップルは2018年4月に同社製品向けの部品、材料などを製造するサプライヤーに再生可能エネルギー電力への転換を強く推奨しました。
時期は前後するものの、国内サプライヤーであるイビデンが2017年3月にアップル向け製品の製造を再生可能エネルギーで100%賄うと発表。
続いて、アップルにプリント基板用の絶縁材を供給している太陽インキ製造株式会社も、2018年5月に100%再生可能エネルギー電力化を宣言しました。
部品や材料の調達元がサプライヤーにSDGsへの対応を要請し、サプライヤーが応じた事例です。
メリット③ 金融機関からの金融支援を受けやすくなる
第三のメリットは、地域金融機関からの支援を受けやすくなることです。
具体的には、普段お付き合いのある信用金庫、信用組合、農業協同組合、漁業協同組合、労働金庫などからのコンサルティングや金融支援を受けやすくなります。
なぜならば日本政府が地方経済を維持・回復させるための経済政策に、今後SDGsを絡めようとしているからです。
詳細は割愛しますが、下図に示すように地域金融機関が金融支援を行うに際しSDGsを考慮する仕組みが構築されつつあります。
これらの背景やその他詳細については、書籍「ものづくり中小企業のためのSDGs入門」に解説されています。あわせて、ぜひご一読下さい。
Amazonのレビューはこちら地域金融機関については国を挙げて上記のような動きがあるので、早めにSDGsへ取り組み始めた方が有利です。
個人事業主や零細企業のSDGs取り組み事例
次には参考となる先行事例を3つ紹介します。
卒塔婆のリサイクルでつくる責任を果たす
有限会社谷治新太郎商店は資本金1,000万円、従業員11名、創業1882年(明治15年)の会社。
主に卒塔婆(そとば、そとうば)を製造する。
使用済み卒塔婆のリサイクルで「12つくる責任つかう責任」「13気候変動に具体的な対策を」への貢献に取り組んでいる。
具体的には、寺院から回収した卒塔婆を処理施設でさまざまな大きさのチップに粉砕。
チップの大きさに応じて、バイオマスボイラーの燃料やパーティクルボードなどの建材、畑の堆肥や動物小屋の敷材として再生する。
端材は自社工場の薪ストーブや小型ボイラーの燃料として再利用している。
また、省電力化を図ることで「7エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に貢献。
例えば、事務所や工場の使用電力量を見える化し、各社員が意識的に機械設備の使用タイミングを調整する仕組みも導入。
太陽光発電パネル付きのLEDライトや、人が通る時だけ点灯する人感センサーも活用している。
さらに、社員がボランティア活動に参加した際の代休や手当を拡充するなど、社員の地域貢献をサポートする体制を整備し、「8働きがいも経済成長も」や「11住み続けられるまちづくりを」に貢献している。
古木の活用で古民家の空き家問題を解消
株式会社山翠舎は資本金3,000万円、従業員75名の会社。
ただし、SDGsに取り組み始めた当時の資本金は2,000万円、従業員数は25名であった。
古木を活かした店舗デザインから施工まで一貫したサービスを提供している。
サービス開始の発端は、空き家となった古民家が社会問題化し壊されている現実に直面し、地元で建築を扱う企業として地域課題の解決に貢献したいとの想いから。
日本の伝統的な工法で建築された古民家には、現在では入手が困難な樹種や大きさの構造材が使われており、それらを「古木」としてインテリア等に活用するアイデアを着想。
「古木」を活かした店舗のデザインや施工、古木を使った家具を製作・販売するに至り、古木という「モノ」の循環により「12つくる責任つかう責任」に貢献している。
また、空き家問題の解消を通じて「11住み続けられるまちづくりを」にも貢献。
さらには、古木という新たな産業を生むことで「9産業と技術革新の基盤をつくろう」をも実現している。
個人事業主でも取り組めることはある
個人事業主でもSDGsに取り組めることはあります。
例えば、個人事務所を開設されているこちらの中小企業診断士のサイトでは、SDGsへの取り組み内容を次のように公表されています。
事業主として取り組んでいるSDGs
- 電子化で紙の使用量を減らす。使用した紙は、(ヤマト運輸などの)機密文書リサイクルサービスを利用してリサイクルに回す。
- 日曜日、女房とともに道路のゴミ拾いをする。
- 理由(障がい者、育児、引きこもり、うつ病など)があって働きに出られない人々に業務を委託する。
いかがでしょうか? 全く取り組めないものではないですよね。
個人事業主の方、ぜひご検討を。そして行動を。
個人事業主や零細企業がSDGsに取り組むときの始め方
まずはSDGsの観点で本業を棚卸し
まずは「自社事業が世の中のどんな役に立っているか」という観点で、SDGsのどの目標に該当するか本業を整理・棚卸しすることから始めましょう。
自社の製品やサービスそのものがSDGsに貢献することが理想。
しかし、上記事例紹介にて「使用済み卒塔婆のリサイクル」があったようにお客様が使ったあとの製品のリサイクルを考えることも一つの手ですね。
また、視点を変えて事業活動のプロセスに着目し、活動プロセスをSDGsに適合するものに変えることで貢献することもできます。
例えば、紙の削減や省エネ化、地域貢献などですね。
下記の動画も参照しながら取り組みを始めてみましょう。
補助金の活用も視野に入れる
新しく取り組みを始めるに当たっては、まとまった資金が必要になることも多いと思います。
国や自治体から交付される補助金への応募を考えても良いでしょう。
補助金はそれぞれによって補助対象となる事業が決まっていますが、SDGsへの取り組みはそれら補助対象になりやすいと言えます。
実際、各省庁がSDGsへの取り組みを支援する事業を行っており、「地⽅創⽣に資するSDGs関連予算」
として公表されています。
SDGsの目標でもある省エネ・省CO2対策などは補助金を活用しやすいテーマのひとつです。
例えば、環境省から「革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速化事業」と題する補助金事業などがあります。
また、各種補助金を探すには、こちらのサイトが便利ですね。
個人事業主や零細企業がSDGsに取組むメリットと事例のまとめ
- SDGsに取り組むと、①ブランディングに効果的 ②取引先との関係性が向上する ③金融機関からの金融支援を受けやすくなる などのメリットがある。
- 自社の製品やサービス自体がSDGsに貢献することが理想だが、事業活動のプロセスにも着目すべき。
- SDGsへの取り組みは補助対象になりやすいので、資金が必要なら補助金への応募も一考の価値あり。
個人事業主や零細企業などの地域事業者と、地域金融機関を取り囲むSDGsの背景については、次の書籍に詳しく解説されています。
地域で精力的に活動されている行政書士の方が執筆されているので、具体的かつ説得力のある内容となっています。ぜひ、ご一読下さい。
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